真っ赤な野いちご

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真っ赤な野いちご

「野いちごが食べたいなぁ」  突然、旦那が甘えた声を出したものだから 、 「何言ってんの」  って、変な声出しちゃった。もう夏だし、野いちごっていったら、田舎に行かないと採れないし。そう簡単には手に入らないでしょ?  「来年まで我慢しなさいよ。それか、ジャムでも買ってくる?」  って言いながら振り向いたら、旦那の顔がドアップだった。近い。近いです。  やばい、怒ったと思われた? 「ウウン、そうじゃなくて」 「?」  変わらず猫なで声で旦那は呟く。あたしは、要らぬ心配してたのね。 「ここにあるでしょ? 真っ赤な野いちご」  そして口をふさがれた。もちろん、旦那の唇で。  旦那が野いちご()きだってことは、知ってたけど。  こう言われると、なんだかフクザツ。 『君の唇、かたちも色も、よく()れた野いちごそっくりだよな』  ねぇ。  それって誉めてるの?
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