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一(一)
玄関を開けた途端、友愛の体にむわっとした熱気が襲った。
短大に入って二度目の夏休み、この日は特に用事もなくのんびりしていると、母に回覧版を届けて欲しいと頼まれた。
しぶしぶ表に出たのだが、家の外に出た途端、冷房の効いた室内が瞬時に恋しくなる。
さっさと届けてしまおうと隣家へ向かうと、ジャー、ジャーと豪快な水音が聞こえた。
ひょこっと隣家を覗いて見ると、友愛より七つ年上の幼馴染、征己がこの炎天下に車を洗っていた。
白いタンクトップにデニムの短パン姿の征己はタバコを口に咥えながら、ホースで車に水をかけている。
その姿を見ていると、ふいに過去の記憶が蘇ってきた。
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