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「それから、どうしたの?」
二回目の百物語は、前回の参加者が事故で参加出来なくなったため、中止を懸念されたが、新たに一名が参加したので、無事に再開された。
「呪われた雑居ビルに入ってしまったから、結局、私は呪われて無意識で道路に飛び出してしまったのよ。そしたらトラックに引かれてしまったの」
新メンバーの穂坂奈緒が最後の百話目を締めくくった。
「呪われた雑居ビルか、確かに怖いわね。でもどうして、そんな場所に?」
日崎は穂坂に訊ねた。
「霊媒士やってたの。テレビ局のひとがその呪われた雑居ビルの除霊をして欲しいと依頼してきたんだけど、幽霊なんて出ても出なくても、この手の番組は視聴率稼げるんだって」
「なにそれ」
「確かに、複数の霊が集まっていたけれど、すごい圧迫感を感じたの。たくさんいた幽霊の中に強い悪意を抱いた悪霊がいたのよ」
「マジでっ?」
「複数の霊が集まって、部屋の気が濁っていたから、それがカモフラージュになっていたのよ。でも私、そのひとの除霊に失敗したみたい」
穂坂は溜め息を吐いた。
「その悪霊は、まだいるって言うこと?」
「ええ。いるわよ。あなたの、すぐ後ろに」
穂坂の瞳には、長い黒髪の女が、包丁を手に、恨めしい目でこちらを睨みつけているのが映りこむのと同時に、日崎は背中にひんやりとした視線が刺さるのを感じた。
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