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「こないだは殺されかけてヒヤヒヤしたよ。ビルから外に出てみれば、見知らぬ女が、悪霊はこの世から立ち去れ! と襲いかかって来たんだよ」
サラリーマン風の男、景山宣昭が最後の百話目を話し始めた。
「変わったひとがいるもんですね。外に出るのが怖くなります」
「でしょう。いるだけでひとを悪霊扱いして殺そうとするんですよ。人間って本当怖いよねぇ」
「それで、その女の人はどうしたの?」
日崎が景山に訊ねた。
「どうにかこうにか、まいたのはまいたけど、多分まだビルの辺りを彷徨いてると思う。まだぼくのことを狙ってると思うと眠るに眠れないよ」
景山は最後の蝋燭の火を消した。
「この部屋ね。強い霊気を感じます。複数の霊が一室の中に集まっていますので、何が起こるか分かりませんので、皆さんは下がって下さい」
部屋の外から女の声が聞こえる。
「来たっ! あいつの声だっ!」
景山は扉越しに聞こえた女の声に、酷く怯え始めた。この聞きおぼえのある声は間違いない。先日、自分を殺害しようと襲いかかって来た女だ。
どうやってこの雑居ビルに自分が棲んでいることを突き止めたのか。どうやって自分の個人情報を入手したのかわからない。個人情報を突き止めることなど不可能な筈だ。にも関わらず個人情報を探し当てて殺しに来るとは恐るべき執念だ。
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