ヒトキライ

　「閉じ込められるぞ、みんなここから早く出るんだっ！」

　景山は勢いよく一室の扉に向かい、部屋から廊下に飛び出した。日崎や河野も閉じ込められまいと部屋から転がるように出ていくと、雑居ビルのロビーに向かって駆け出した。

そんなに人殺しが面白いのか。女がこれから起こそうとする連続殺人をテレビで流そうとテレビ局の人間はカメラを構えている。番組として観る人間たちはさぞ面白いだろうが、狂った女から逃げ回っている自分たちは必死なんだ。面白がっているより、寧ろ助けて欲しいぐらいだ。

そうした世の中の人間こそ、本当に悪霊に憑依されているのではないか。雑居ビルの住人たちは、そう思うとひやりと背筋が凍りつきそうになった。