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それからひと月と少しが過ぎた、六月の終わり。
壮一とリョウタは、平日の放課後はほとんど毎日のようにどちらかの家に直行で遊びに行っていたが、リョウタが、自分と会った後に壮一が恋人にも会いに行けるようにと気を利かせ、いきおい壮一の家で会うことが多くなった。
そして休日は、壮一とミツミがどちらかの家で自宅デートをする。
時々は三人で会い、たわいもないおしゃべりに興じる。
そんな平和な日常の中で、突然、ひとつの事件が起こった。
田村保奈美という、二十代半ばのOLが、死体で発見された。
犯行時刻は深夜、目撃者はなく、同居していた家族が朝になって悲劇に気づいた。死因は絞殺で、自宅の庭先に亡骸が転がされていた。
そしてその「自宅」が、ミツミの家のすぐ隣だった。
警察や報道陣の無遠慮な往来を、壮一もリョウタも、苦々しい気持ちで眺めていたのを覚えている。
田村保奈美は、
「最近学生の恋人ができた」
「さらに上司からも色目を使われているが悪い気はしない」
と自ら周囲に漏らすなど、人間関係は広く奔放だった。
脱法ドラッグの使用歴まであり、そのことも面白おかしく広められた。
犯人の、道路から田村宅への侵入は確認できなかった。
そのためもあり、侵入経路は、隣り合ったミツミの家からなのではないか、という推量がなされた。広い敷地を持ち、植木やエクステリアの豊富なミツミの家が、犯行のための通路に使われたと見られたのだ。
ミツミとその両親は、情報提供を惜しまなかった。
――家族の誰もが、そんな侵入には気づかなかった。もし本当に自分たちの土地がそんな犯罪に利用されたとするのなら、全く許せない。
ミツミの父親は憤慨し、姿をくらませた犯人を糾弾する声を上げた。
その数日後、もうひとつの事件がミツミの家を襲ったのだった。
新たな死体が現出し、ミツミの両親は慟哭しながら、どうにか葬儀の手配を取り付けた。
田村保奈美を殺した犯人と、同一なのか――……
それは、まだ判明していない。
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