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泥色の濃い青い煙が、遥かに高く澄んだ、七月の空に昇っていく。
火葬場というのはもっと独特の空気感が立ち込めているのだろうと思っていた壮一は、妙にこざっぱりとした直方体の建物にいくぶん拍子抜けしていた。
丘の上に建つ建屋からは五十メートルほど離れた茂みに、壮一と、高校の同級生のリョウタは身を隠して潜んでいた。
田舎町の高校一年生が、平日の昼間にこんなところにいるのが見つかれば、奇異の目で見られるだろう。そうなればなったで構わないが、隠れたままで済めばそれに越したことはない――というのは二人の一致した意見だった。
「なあ、俺はともかく、壮一は葬儀に参加してもよかったんじゃねえの。……ミツミさんの、彼氏なんだからよ」
「彼氏って、全然身内じゃないだろ。いいんだよ……ミツミが参列してるわけじゃないし、あそこに混じれるかよ。一週間前にはミツミんちのすぐ裏の家で殺人。それで、……一昨日は、これだぜ。ミツミの家族を刺激したくない」
「刺激したくねえってツラかよ、目え吊り上げやがって。隠れてジロジロ見てる方が、よっぽど怪しいと思うけどな」
「リョウタ。俺は、犯人を許さない。必ず捕まえてやる。警察じゃない、俺がだ。一昨日の夜――事件当夜だ――ミツミの家の犬は恐らく犯人に向かってだろうが、めちゃくちゃに吠えたっていうぜ。犯行を防ぐチャンスはあった。なのに、こんな……。捕まえてやらなきゃ、ミツミに申し訳が立たないからな」
ああ、とリョウタはうなずいた。
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