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「あ、あそこに赤い花がいっぱい咲いてる」
女の子はそう言うと、僕のいるところへ近づいてきた。ヤバい。見つかったら大変だ。僕は後退りして隠れる。
「あれ、そこに誰かいるの?」
どうやら見つかってしまった様だ。僕は頭を垂れて歩いて行った。
「熊さん、熊さんなの?わたしを襲ったりしないでね。花を摘みに来ただけなの」
僕はウンと頷くと赤い花を口に加えて摘んだ。女の子は恐怖に引き攣った顔をしていた。
ああ、僕が話すことが出来たなら何もしないって事が、好きだって事が伝えられるのに。
「熊さん、赤い花摘んでどうするの?」
「・・・・」
僕はソーっと歩いて花を女の子の前に置いた。女の子は恐々と花を拾い上げるとニコッと笑った。
「有難う、熊さん、ママ喜ぶと思う。熊さんってもしかしたら本当は優しい動物なのかもね」
妖精達が冷やかすようにキャッキャと笑っている。僕は照れ臭くなった。女の子が喜ぶ顔が嬉しい。
そうだ、僕のママがどんな病気でも治す薬草が生えている場所を教えてくれた事がある。もしかしたら薬草を手に入れれば、この女の子のママのがんも治すことが出来るかもしれない。
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