【Ⅲ】死者の書。

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目覚めた時── 其処には、光と風と安らぎがあった。 五感を取り戻すのに、ほんの僅か時間が掛かったが…その不便さも、直ぐに克服した。 此処は、何処だろう? 遠くで、微かに、鳥の囀ずりが聞こえる。 辺りは、一面の花畑。 百花繚乱と咲き誇る花々が、馥郁と芳香を放っている。 美しい世界。夢の様な世界── 空には幾重にも虹が掛かり、月と太陽が、同時に天空を飾っている。 此処は…何処だろう? 広い花畑に、たった一人。 私の他には誰もいない。 置き去りにされた仔犬の様に、私は、茫然と辺りを見回していた。
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