【Ⅲ】死者の書。

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高空を、鳥の様に(かけ)る私── 目指す先には、目映い光の球が浮かんでいた。 疑いも(おそ)れも無く、私は光の中に飛び込む。 飲み込まれる意識。 自我の崩壊。 私の全てが、リセットされる。 あぁ…思い出した。 これは、『儀式』だ。 輪廻転生の為の『儀式』── やがて意識が薄れ、『私』は『私』を忘れてゆく… 待って…待って。 待って下さい──神様! 私は忘れたくない。 もう一度だけチャンスを下さい。 もしも生まれ変わる事が出来るのなら、同じ『私』に生まれたい。 ──無くしたくない無数の記憶。 優しく強く育んでくれた父母。 苦楽を共にした友達。 そして… 「智也…」 最期の力を振り絞って、私は、その名を呼んだ。 今度こそ、貴方と幸せになりたい──        
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