【Ⅰ】転生の書。

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やがて、闇が途切れる場所に辿り着いた。 目の前に忽然と現れた、白く輝く『窓』── 恐る恐る近付いて、私は、中を覗き込む。 其処には… 全裸で睦み合う一組の男女が居た。 白い裸体の女が、浅黒い肌の男に組み敷かれ、淫らな情交に耽っている。 仰け反る背中。 交わされる口付け。 愛し合う二つの肉体が、同じ高みを目指して登り詰めて行く。 その狂態を漠然と眺めながら…私は、思った。 ──あぁ。 この男女が、私の父母となる者なのか… こちらの『女』が、私の母。 こちらの『男』が、私の父。 子宮に注入された熱い情欲が、魂の器に出逢う迄の、長く過酷な命の旅… そうして、私は、この世に生を受ける。 彼等の『娘』として、光有る場所へ意識を移すのだ。
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