【Ⅱ】輪廻の書。

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それから数日後── 私は、智也を両親に紹介した。 初対面の彼に、いきなりNY支社転勤の話を聞かされた父は、暫く顔色を無くしたまま硬直していたが… やがて、智也の人となりを理解してくれた上で、二人の旅立ちを許してくれた。 一方、母は一目見て彼を気に入った様である。娘を手放す寂しさを堪えて、私達を祝福してくれた。 翌日── 私は、会社に辞表を提出した。 直ぐに部内での送別会が催され…智也は、同僚や後輩達から、やっかみ半分、冷やかし半分の、手荒い祝福を受けていた。 その後の数日間の記憶は、何やら曖昧模糊としている。 仕事の引き継ぎと処理に追われて、とにかく目の回る様な忙しさだった。 そうして── 私達は、出発の日を迎えたのである。
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