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エピローグ
目映い春の陽光…
人熱れに包まれる駅のホーム。
笑い声と話し声。
期待と…ほんの僅かの不安とが交錯するコンコース。構内アナウンスが、流暢に、新幹線の到着時刻を知らせている。
「行こうか、理奈?」
ベンチから立ち上がり腕時計を覗くと、彼は優しく私を振り向いた。
「お母さんから返信あった?」
「うん。『こちらは大丈夫だから、気を付けて行ってらっしゃい』って。」
「そう…お父さん、寂しいだろうな。里奈と暫く会えなくなるから。」
「そうだね。でも大丈夫。お母さんがいるもの。」
「…そうかな?」
「そうだよ。」
愛しい人と見交わす笑顔。
そして私は、スーツケースを手に立ち上がる。
新婚旅行の行き先は、京都。
そこは、彼の転勤先でもある。
若くして実力を認められた彼は、私の自慢の『夫』だ。薬指には、未だ新しい輝きを湛えた、お揃いの指輪が嵌められている。
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