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今日、私は初めてあの高い柵を越えた。
物心ついた時から知っていたあの柵。
越えることなど考えもしていなかったあの柵。
あの柵を、今日、初めて越えることが出来た。
この柵1つを越えたところでなんの意味もないのかもしれない。
この先にはまだ無数の柵があるのだから。
この柵を越えることになど、何の意味もないのかもしれない。
私も昔は、なんと非合理的なことをしているのだろうと思っていたのだから。
だが、今なら少しわかる気がする。
この柵を越えていった人たちが、なぜそんなことをしていたのか。
答えは柵を越えた先にしかないのだ。
やってみなければ、何も始まらない。
まだ、先は長い。
私にこの全てを越えることが出来るのか、想像もつかない。
ましてや、この道を進んでいった偉大なる先人たちに追い付くどころか、その背中を見つけることすら難しいのかもしれない。
だけど、こんなところで止まっていられない。
柵を1つ越えただけで見える世界があったのだ。
その全てを越えた先には、一体どんな世界が待っているのだろうか。
今はまだ、1つ越えることで精一杯だが、いつか、その悉くを乗り越えて見せよう。
そしてその先にあるなにかとやらを見つけてやろうではないか。
そう、これは。
短距離走に子供の頃から触れてきた少女がハードル走に転向する物語。
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