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 決断の遅かった自分を悔いながら自転車をこいで帰路につく。二人で話せる機会は貴重だって分かっているのに、二の足を踏んでしまった。折角会えたのに。  頭の中で図書館のベンチで並んで座った彼女を反芻する。彼氏と会ってきた・・・けど、髪は濡れた感じはなかった。隣に座ったときに石鹸のような匂いもなかった。会ったからと言って、ヤッたとは限らない。そしてヤッたからと言って、お風呂に入るとは限らない。分かってる。頭では分かってる。  間接キス。した。思い出しただけで無性に叫びたくなる衝動に駆られる。夕方とはいえ、まだ明るい。ここで叫んだら変質者だ。  自分の何とも形容し難い感情を振り払おうと思い切り自転車をこいでみる。  何の迷いもなくペットボトルを差し出した彼女。多分オレが特別なんかじゃなくて、彼女の性格だろう。分かっているけど、女子によくある「生理的に無理」の対象にはなっていないことに安堵する。それだけでも嬉しい。願わくば、実はオレに好意を持っていて、ちょっとドキドキしながら差し出してくれていたらいいななんて、都合のいい想像をする。
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