<第二十六話~花火と告白~>

2/4
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
「きれーだ……」 「よっぽど気に入ったんだなソレ。食べ物だからな?宿に帰ったらガブッてするんだぞ、ガブッて」 「どんな味がするんだろうか。こんなに堅いのに、子供の力でかじれるものなのか?」 「案外なんとかなるみたいだぜ。でないと子供のお菓子として成り立たねーじゃん」 「そうなのか……」  本当に、両親の遺産に殆ど手をつけずに残しておいて良かったと思う。大嫌いな二人だが、金を遺してくれたことだけは感謝してもいい気がする。そうでなければあんな豪華な晩御飯の出る宿になど到底泊まれなかったところだ。  ちなみに、宿にはアオの名前を“日下部蒼”で登録していた。自分の弟だということにしたのである。幸い、彼はアルビノを装うために外ではウィッグもつけるしコンタクトも嵌めている。多少似ていなくても誤魔化しがきくというものだ。 「もう少しこの道を歩いたら、河川敷に出る。そこが絶好の花火ポイントなんだと。丁度、もうすぐ始まる時間だし……花火見ながら焼きそばでも食べるか?」  やきそば、の四文字が堂々と掲げられている屋台が近付いてくる。アオは流石にビックリした様子で理音を見た。 「ま、まだ食べるのか!?さっき一回戻って宿の晩御飯を食べたばっかりなのに!?」  いくらなんでも食べ過ぎだ!と言いたいらしい。確かにいつも以上に今日は食べてしまっている気がするが――観光地に来たらついつい買い食いが増えるのは仕方ないことではなかろうか。それに、いつも部屋にとじ込もってばかりなのが、今日は遥かに多く歩いて運動しているのである。 「ただ晩御飯を食べただけじゃない、私の分も殆ど理音が食べたんだ、実質二人分!いくら貴方の体が大きいといっても食べ過ぎて体を壊すのは良くない!」 「えー」 「えーじゃない!全く……昔はいつもこういうことで叱られるのは私の方だったのに……」  叱られる方?というアオの言葉に首を傾げる理音。アオが食べ過ぎでやらかすタイプとは思えないが。  と、ここで思い出したのは、彼が故郷で科学者だったという情報だ。ひょっとして。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!