<第十四話~宣戦布告~>

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――何!?  予想外だったのは。男が早々に――大通りの方向へと逃げ込んだからだ。しかも、駅前広場に向かう道。この時間はこれからどんどん人が増えて、むしろ混雑しかねなような通りである。 ――まずい、人目がある場所で、重火器を使うわけには……!それに、下手に撃ち込んだら無関係な一般人に当たってしまう!  動揺し、急いで翼を再収納した――そのタイムラグが、致命的だった。大通りの手前で動きが止まったエスメアと、エスメアと共に追尾していたドローンに浴びせられたのは――真っ白な、粉のような液体である。 「ぐあっ……!?」  衝撃に目をつぶるエスメア。理解できたのは、聴覚に響いた誰かの怒声だ。 「コラー!消火器を勝手に持っていくな、馬鹿野郎ー!!」 ――どこかの店か家から、消化器をひっぱってきて……浴びせてきたのか!?  最悪なのはエスメア自身よりもドローンの方である。強烈な薬剤をもろに浴びたドローンはショートして思い切り墜落していた。様々な機能を追加した結果、防水・防塵耐性を犠牲にしたことが裏目に出た形である。 ――くそっこれでは追尾もできない……!なんてことだ、この私が!  どうにか薬剤を振り落として表通りを覗けば、既に男の姿は雑踏に消え失せた後だった。エスメアは舌打ちする。まさか、ドローンも武装もあって取り逃がしてしまうことになるだなんて。 ――あいつは一体何者だ……!?今の動き、まるで……。  自分に、殺意がないことを読まれていたかのようだった、なんて。そんなはずがないと、少尉は首を振った。人の心を読む能力など、地球人が持ち合わせているなんてデータはどこにもないのだから、と。
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