<第二十三話~隣の幸福~>

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「大富豪というゲームはルールとセオリーを聴くに、相手がどんな手札を持っていて、それが場に出せる状況であるのかどうかを推理しつつ駆け引きで戦うゲームだろう?例えば私の手札に2があったとしても、相手がジョーカーを持っている状況だと負けてしまうから、そのまま親を取られてしまうことになる」 「うん、そうだよな」 「二人である場合、私が持っていなくて場に出ていない手札は、全て相手が持っていることになるだろう?つまり、相手の手札を読み合うという面白さがなくなってしまうんだ。だったら、相手の手札が読めないような状況を作れば問題ないだろうと考えた。多少変則的ではあるがな」  アオが提案したのはつまり、二人プレーヤーであるにも関わらず手札は四人分配るというやり方だった。勿論、使われる手札は二人分のみ。残り二人分の手札が、実質ゲームから除外されて使われないということになる。  こうすることにより、自分が持っていない手札であっても、相手が持っているかそれとも除外された手札の中に入っているカードなのかがわからなくなってくる。自分がこの札を出すと相手に勝てるのか?それとも負けてしまうのか?が全く予想できなくなるのだ。  勿論、この方法をすると“死んだ手札”はゲーム終了まで場に出てこないことになるので――“場にAが二枚出たから残りは二枚だな”なんて計算もあまり意味がなくなってくるわけだが。それでも相手の手札が完全に読みきれてしまうよりは、遥かに予想外のゲーム展開が楽しめるというわけだ。 「そして理音、貴方は三枚揃い、四枚揃いを作るのは好きだが階段のことは忘れがちだとすぐに気づいた。そもそも革命ルールを盛り込みたい人間は、同じ数字の手札を揃えることの方に拘るものだろうしな」  そんなわけで、アオとやった大富豪五回戦。アオが不慣れだった一回戦目だけ理音が勝てたが、あとは四回連続で理音の負けだった。プレイングが簡単に見抜かれてしまっていた、というのが最大の理由だろう。 「だから階段で攻めていくと、大抵貴方は出せなくて親が取れる。むしろ、二枚、三枚揃いを重視するために手札が階段になっていても気づかない」 「とか言いつつ、お前もいやーなタイミングで三枚揃いとか出してくるよな?とりあえず四回戦目の革命のタイミングとかいやらしすぎるだろ、自分が2とかAをばんばん使ったあとでそれやるか普通!?」 「むしろそのタイミングでやらなければ面白くないじゃないか」  正論!正論ですけども!と理音は突っ伏したくなる。このまま負けっぱなしでは悔しい。宿についてからも時間は余ることが予想されるし(お祭りの開始地獄は夕方になってからなのだ)、とにかくリベンジを図るぞと決意する理音である。  ついでに、UNOについても。三回連続ドボンの恨み、忘れるべからずだ。
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