<第十九話~支配者達のカルマ~>

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<第十九話~支配者達のカルマ~>

 ファラビア・テラの惑星の技術ならば、何億光年も先の惑星に短時間で到達することも不可能ではない。ワープで飛ばせる距離には限界があるため、さすがに一瞬で飛ぶということはできないが。それでも普通ならば光の速さで飛んでも何億年もかかるはずの距離を、おおよそ数時間まで短縮することが可能であったりする。 ――とはいっても、流石に片道三時間かかる距離を一度戻るというのは……効率的ではないのだがな。  エスメアは少々苦い気持ちになりながら、宇宙船をファラビアのステーションに着陸させていた。不満がありながらも一度戻ることに決めたのは、ひとえにそれが神に等しい女王陛下の命令であったからに他ならない。  せっかく、ロックハートを匿っているであろう男に接触することに成功したのだ。ドローンの補充だけして、即座に再度近隣の探索をかけた方が遥かに効率が良かったはずなのだが。  連絡をよこしたのは直属の上司であるルイン・デペロトである。優秀な准将だった父に瓜二つ、がっしりとした体格と豪腕に恵まれた知将であるルインはエスメアにとっても憧れの存在だった。父親共々、女王陛下の信頼が厚いというのもある。そのルインが、随分と焦った様子で帰投を促した。よほどのことがあったと見て間違いあるまい。 ――確かに、女王陛下はまだお若く、子供っぽいところがあるのは事実だが。それでも、今回のミッションがどれほど重要であるかは十二分にご理解頂けているはずだ。  ロックハートを誰よりも取り戻したいと思っているのは女王陛下だ。彼女のあの者への深い愛情は本物であるし――何より、ロックハートがいなければこの惑星の未来は存続できないというのも正しく分かっているはずなのである。  その任務を中断させるということが、どれほど結果を遅らせることになるか。ただでさえ、彼はガイアの民。非常に厄介な“体質”を持っている。一秒でも早く見つけ出さなければ、“二つ目の宝”をいずこかに隠されてしまう可能性も十二分に有り得るというのに。 「エスメア!」  王宮に到着すると、すぐさまルインが飛び出してきた。比較的冷静沈着である彼が、本当に困りきっている様子である。あちこち負傷している――のは恐らく、少女の見た目でありながら非常に身体能力が高い女王様の“癇癪”に手を焼いたせいであると思われるが。  何兆人もに登るファラビアの民、それを王族が纏めあがることができる理由は、神話だけではない。王族達は他の貴族や庶民と比べて、身体能力に非常に恵まれているのだ。幼い少女に見える女王陛下もその例に漏れない。  彼女の祖父などは、自ら前線に赴き剣を振るう王としても有名だった。孫のリアナももし訓練すれば、非常に強力な戦士になるのは間違いないだろう。
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