1/2
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ

 他の人には無い力を、僕は持っている。  超能力とか特殊能力とか、所謂異能とか言われる類の物だ。  しかし僕は、世界を救ったり滅ぼしたり人の心を動かしたり物を動かしたりなどという、大きな事を成し遂げる事は出来ない。  僕の能力は、吹いたシャボン玉に思い通りの色を着けること。  特別な手段や道具など全く必要ない。ただ息を吹き出す瞬間に、出したい色のシャボン玉をイメージするだけ。それだけでどんな色でも思いのままだ。  この能力に気付いたのは、物心ついたばかりの頃に、何となく公園でシャボン玉で遊んだ時の事。  青、緑、黄色、ピンク。思い描いた色が全てシャボン玉となって宙を舞っていた。  当時はこれが何ら特別な事だとは思わず、そもそもシャボン玉というものは“泡を思った色に出来るおもちゃ”なのだと認識した。  しかし、どうやらそうではないと気付いたのは、公園にいた子供たちが「すごいすごい」と騒いだ時だ。  その光景に、僕は何となく自分が特別な存在なんだと思った。  子供というのは単純で、僕はすぐに人気者になった。  やがて評判が評判を呼び、子供内だけではなくだんだんと親や近所の大人からもちやほやされるようになっていった。  ただ一人、眼鏡をかけた厳格な女の担任の先生だけは「そのままじゃダメだ」と僕に注意していた。──傲りが見られるようになったのかもしれない。  だけど僕には味方が多すぎて、耳が痛い言葉なんて届きやしなかった。  さらに噂が噂を呼び、僕はテレビにも出演した。  当時の奇術ブームにも乗っかってどんどん人気者になる僕は、手が着けられないくらい天狗になった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!