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 ショーは滞りなく終わり、僕は安堵の息を漏らす。  ここからは、子供たちのリクエストに応えるコーナーだ。段取りが無い分気楽に臨めるし、ダイレクトに感想が返ってくるのでやり甲斐もある。  何より、指定された色のシャボン玉を吹くのが僕の真骨頂だ。  車椅子の女の子に頼まれて、ピンクのシャボン玉を飛ばす。  痩せ細った男の子にせがまれて茶色、黄色、緑、黒、また茶色と断層になっているシャボン玉を飛ばす。退院したらハンバーガーを食べたいんだ!と目を輝かす。  喜んでもらえると、ホッとする。  子供騙しだと酷評されていた僕の芸でも通用するのだと安心できた。  しかし──。  次の番の子たち──おとなしめの男の子と元気な男の子の兄弟だ──のリクエストに、僕は表情を固まらせた。 「ねーねー! (なお)君に赤い大っきなの見せてあげて!」 「赤……?」  ──まずい。笑顔そのままに、僕の手はフリーズしてしまう。 「ピンクじゃダメ?」  琴胡が男の子に微笑みかけるが、彼は首を横に振る。 「んーん、ピンクもいいけど赤がいい! カッコいいんだよ! ソルジャーレッド!」  ソルジャーレッド。今放送している特撮戦隊ヒーローのリーダーだ。  差し当たってという(てい)ではあるが、僕は連続で別の4色のシャボン玉を人型サイズに作り上げる。 「わあ! グリーン! ブルー! イエロー! ピンク!」  シャボン玉を一つ一つ追いかけながら、男の子は歓声をあげる。レッド以外のメンバーだ。 「すごいすごぉーい! ……でもレッドは?」 (う……)  誤魔化せたと思ったがそうはいかないようだ。  琴胡が苦笑交じりに笑いかけながら、フォローする。 「ごめんね。赤いのはできないんだ」
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