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「ナギ、あなたに話さなければいけないことがあるの」
あたしの前に座ったナギはきょとんとした顔であたしを見た。その顔を見ているだけで涙が滲んできた。
「これを見て」
あたしは彼に背中を向け、うなじにかかる髪をかき分けた。蜥蜴の形をした赤い蚯蚓腫れを彼の目にさらす。
「それは?」
「紅蜥蜴の呪い。紅蓮の魔女の言い伝えの実体よ」
あたしはナギに向き直った。
「遠い昔、紅蜥蜴の神に呪いをかけられた者がいた。蜥蜴の形の蚯蚓腫れは呪いのしるし。そして呪いは人から人へ伝播するの。呪われた者の身体に触れたり、その血が体に着いた者へね。最初は小さな水ぶくれ、それが蜥蜴の形になり、呪いは全身に広がる。最初の冬が来る頃には足を引き摺るようになり、二度目の冬には歩けなくなる。三度目の冬は十人のうち九人が死ぬ。紅蜥蜴の神に選ばれた一人だけが生き残り、再び立ち上がって歩き出すことができるのよ。生き残った者はもう紅蜥蜴の呪いで体を損なうことは無いし、生き残った女が産んだ子供は生まれつき赤い紋章を身に刻み、呪いが身体を損なうことは無いの」
ナギの顔が真剣なものに変わった。
「あたしは生き残った者の子孫が集まって暮らす村で生まれた。村人は紅蜥蜴の呪いを村の外に伝播するつもりは無かったし、気を付けて対処すれば不慮の伝播を防ぐこともできた。でも、周りの村の中にはそうは考えない人もいたの。彼らは徒党を組んであたしたちの村を襲った。呪いを根絶やしにしようとしてね」
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