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あたしの悩みはそれだけにとどまらなかった。
次の日、いつも能天気にふるまっていたナギが、真剣な表情で問いかけてきた。
「なあ、きみはもう暫くしたらここを旅立って別の土地に行くんだろ?」
「ええ、この辺りの獲物が少なくなったらね」
「その時、俺も一緒に行ってはいけないか?」
「え……」
「きみの話を聞いているうちに、俺も遠くの世界を旅して回りたくなった。きみが狩りをして暮らしていくなら、その手伝いをさせてもらいたい。俺は槍が使えるし、弓矢が必要と言うのなら使い方を覚える」
「でも……」
「一緒に旅をしても、今と同じように、手の届くところには近づかないと言う決まりは守る」
あたしの胸に一瞬、一緒に狩りをするナギと私の姿が浮かんだ。手分けをして獲物を追い込み、逃げ場を失った獲物に毒矢を打ち込む。一人で狩りをするより、随分捗るだろうし、獲物に逃げられることが少なくなるだろう。だけど……、そんなことはできないのはわかっていた。ナギと一緒に旅することはできない。そんなことをしたら……。
「だめよ。一緒に連れてはいけない」
「そこを何とか」
「あたしの狩りは一人でないとできないものなの。他の人がいても邪魔になるだけよ」
「そうか……」
ナギは何度も振り向きながら帰って行き、あたしは腕を組み、睨みつけるようにして彼を見送った。ナギの姿が完全に見えなくなってから、座り込んで膝を抱え込む。
また、嘘をついてしまった。でも、仕方ない。あたしと一緒に旅をすることは、その者に死をもたらす。それがあたしの背負った宿命だった。
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