なぜだか きみのほっぺが 赤

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「なぁなぁ、カナコ?」 「ん?」 「お前の友だちになってやろうか?」  好きにすれば、と言いたげな表情のカナコ。 「お前の家に遊びに行ってやってもいいぜ」 「じゃあ、今度ね」  カナコは笑う。 「あっ、そうだ!」  カンタは思い出したようにランドセルの中に手を突っ込んだ。 「これ。プレゼント」  カンタが差し出したのは、赤いしおりだった。  急なプレゼントに目を丸くするカナコ。照れ隠しのために、それを強引に突き出すカンタ。 「──ありがと」  しおりを受け取ると、カナコはランドセルから本を取り出し、適当なページの間に挟み込んだ。 「何の本読んでるの?」  カナコは笑いながら答えた。 「ひみつだよ。今度、家に遊びに来たら教えてあげる」 「ケチッ!」  いつもと変わらない始業のベルが鳴る。教室のドアが開き、生徒たちが身を正す。カナコの横顔から教壇の黒板へと移るカンタの視線は、いつまでも名残惜しそうだった。
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