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なぜだか きみのほっぺが 赤
カナコは泣き腫らした目を真っ赤にした。涙が止まらず、何度も目をこする。その目はさらに真っ赤になった。
隣でふざけていたカンタは、その様子を見てコトの重大さに気づいたのか、ばつの悪い表情で突っ立っている。
「知らねえし」
やがてカンタは友だちのあとを追うように、その場から立ち去った。無残にちぎられた紙切れを握りしめたカナコを、ひとりぼっちにしたまま。
「カナコの家って、なんでお父さんもお母さんもいねぇの?」
隣の席からカンタが覗き込んできた。
「お父さん、いるし──」
「お前のお父さんなんか、誰も見たことないって言ってるぜ」
「仕事が忙しいからね」
「なぁなぁ。お前って、おばあちゃんから生まれてきたんじゃねぇの?」
消しゴムのカスをカナコに投げながら、クラスメイトに聞こえるように大声で叫ぶ。カナコは目を伏せて聞かないフリをした。
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