1章 麻生家の朝

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星空(かなた)」  ため息まじりに名前を呼んだ。 「姉ちゃん、おはよっ!」  悪びれた様子もなく、私の顔をのぞき込む。  時々ベッドに潜り込み、私を抱きしめながら眠る三男坊。怒っても怒っても全く懲りる様子がない。高校三年生になっても甘えん坊で困ってしまう。  こんな星空だが、学校ではバスケ部のキャプテンでエース。スモールフォワードだったかな? そんなポジションらしい。  学校ではそれなりにしっかりしているようで、女子からも人気があると親友の長谷君から聞いたことがある。  身内の私が言うのも何だが、黙っていればイケメンだ。小さめの顔にくりっとした愛らしい目。髪は染めてはいないが少し茶色いくせ毛。  そして身長は百八十センチ程。一見痩せているようで筋肉質。  早く姉離れをして彼女を作ってくれるといいんだけど。しかしその気配は全くみられず、甘えがエスカレートしているように感じる。  思わず口からため息が零れてしまうのも仕方がないと思う。 「たとえ弟とはいえ、こういうのはよくないと思うんだけど?」 「だって姉ちゃんが大好きなんだもん」  好き好きと言いながら顔をすり寄せてくる。
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