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「愛月じゃなきゃダメなんだ、俺」
「嘘! 他の女性とも付き合っていたんでしょ」
それって私以外の女性ともベッドを共に……
私は優陽を振り切り、駅へと向かおうとした。けど行く手を優陽の左腕に阻まれてしまう。
「愛月を忘れようとした。でもできなかった」
もう一度唇が重ねられる。今度は拒めず……拒まずに受け入れた。
キスが唇から耳へ移動してくる。少しくすぐったくって身を捩った。
「愛している。愛月は?」
「私は……」
でも頭に浮かんだのは弟たちのことだった。
まだ独り立ちしていない弟がいる私では昔と同じになる。
「そろそろ自分の幸せを考えてもいいんじゃないのか?」
自分の幸せ?
「私は幸せだよ」
「そうじゃなくて、女としての幸せだよ」
優陽がまた私を抱きしめる。
「だめだよ」
でも口からでた言葉とは裏腹に、私は優陽の背中を抱きしめていた。
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