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4章 自分の幸せ
午後になっても仕事に集中できなかった。
ノートにアイディアを書き出す手が止まってしまう。
今日は本当に驚いた。
元彼が上司になり、親友にその元彼の情報を聞き出すよう頼まれ。
自然とため息が零れる。
優陽に再開したからなのか、友美との仲を取り持たなければならないためか。
多分両方なんだろう。
このまま残っていても集中できそうない。私は早々に仕事を切り上げることにした。
会社を出ると外はまだ明るい。蒼海はバイトだし、星空は部活で遅い。
想地はまだ社内にいるのだろうか。想地へメールをしようとしたところで声を掛けられた。
「愛月」
振り返らずとも誰だか分かる。
「今帰りか? 少し付き合えよ」
「優陽」
思わず昔のように名前で呼んでしまった。
「懐かしいな」
「すみません。桜庭主任」
「よせよ。プライベートでは優陽でいいだろう? 俺とは知らない仲じゃないんだし」
「……会社では『自分』だったのに、今は『俺』なんだ」
「んん? ダメか?」
「ううん。『俺』の方が自然」
お互い笑い合う。六年のブランクが嘘のようだ。
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