ザリガニって羨ましい。

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ザリガニって羨ましい。

突然だけど、ザリガニって羨ましいよな。食べられないし、ちゃんと赤いし。俺はさ、人間に茹でられないと赤くならんのよ。悲しくなるでしょ?今は、赤とも言えない、黒とも言えない、なんとも言えない色してる。これから網の中にわざわざ引っかかって、発泡スチロールに収容されて、誰かに人身売買されて、鍋に入ってやっと赤くなんの。なんかめんどくさいよな。それに、やっと赤くなったと同時に俺には最期が近づいてるってこと。切ないよな。 ザリガニとカニの違いとか知ってるか?知らないよな。教えてやる。ってこれが説明するのも難しい。めちゃくちゃ簡単に言うと、ザリガニはエビの仲間、カニはカニの仲間。ザリガニはエビの仲間ってのは見た目から分かる。カニはカニの仲間...。よく分からん。というのもカニの中にも実はカニの仲間でないものがある。例えば、タラバガニ。結構有名だろ?でもこいつはヤドカリの仲間なんだ。ウィキペディアで調べてごらん。 「ザリガニは赤がいい」って言ったけど、なんで赤くなるか知ってる?どうせ知らないだろ。もともとカニは赤いと思ってた野郎もいるんじゃねーのか?教えてやろう。これは俺達の体の中にある「アスタキサンチン」っていう色素が原因なんだ。聞いたことある人もいるかもしれない。サプリメントとかによくなっているな。藻によく含まれているんだ。これが鍋に入る前までは体の中でタンパク質と合体しているせいでその「アスタキサンチン」ってやつは緑色。まぁ、だから今の俺はなんとも言えない色してんだな。それが茹でることで、タンパク質と分離して元々の色素を取り戻す。これが赤色ってわけ。だから茹でると赤くなるんだ。これはエビも一緒だ。 でも「アスタキサンチン」は俺たちカニは自分で作れない。じゃぁ、何故あるのかって?それはズバリ食物連鎖さ。「アスタキサンチン」は藻によく含まれてるって言ったろ。俺が食べたプランクトンが食べてるのが藻ってわけ。面白いだろ? じゃあ、もともと赤いカニはいねぇのかって?これがいるんだよ。日本じゃねーぞ。オーストラリアだ。オーストリアの北西にあるめちゃくちゃちっさい島。その名も「クリスマス島」笑っちゃうだろ?この島にアカガニっていう小さなカニ達が住んでるんだ。そいつらは名前の通り元々赤い。この島ともう1つの島だけに住む固有種さ。産卵期になると1億を超えるこいつらの集団が卵を産みにくる。ツアーをやるほど観光客にも人気らしーぜ。「数がえげつないわ!」つて思う人もいるかもしれんけどこれも理由がある。もともとアカガニを食べるネズミがいたんだけど、そいつらが絶滅したらしいんだ。だからアカガニ達の1人舞台。めちゃくちゃ数がふえた。俺もカニとは言え、見てみたいもんだ。 どうだお前ら。明日の晩御飯は「かに道楽」に言って今言ったこと家族に自慢したくなってきたろ。無性にカニが食いたくなってきたろ。仕方ない。網に引っかかっといてやるか。 「追伸:ザリガニって茹でると実は美味いらしいぜ」
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