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ー5:妻からの探りー
ー5:妻からの探りー
あの日以来、俺は完全に自分を見失っていた。
まさかネットで騙されただなんて恥ずかしくて妻には言えない。
なんとか口座の残高だけは元に戻し
損失だけでも隠そうと必死だった。
ネットには相変わらず即金系のノウハウが並んでいる。
もう二度と騙されないぞと覚悟していたが、あのギラギラしたページを見ると、どうしても期待感が刺激されて、気持ちを抑えられなくなる自分がいる。
一つでも本物があれば逆転出来ると信じていた。
そして毎回その可能性に賭けた。
結果、1円も成果を出すことが出来ないまま教材だけが溜まっている状態になった。
これを世間では『ノウハウコレクター』と言うらしい。
俺はこのままなのか、ダメな人間なのか、年下の上司にペコペコし続ける人生なのか、
どんどん自己嫌悪になっていく。
日曜の午後、書斎で途方に暮れていると、
「ねぇ、ちょっと話いい?」
急に妻が話しかけてきた。
振り向くと、その顔色は明らかにいつもと違う。
これはもう「バレている」と、さすがの俺でも分かった。
リビングに行き、ソファーに腰掛ける。
テーブルにはコーヒー。
気を落ち着かせようと飲んでみたが、心なしか少し冷めている感じだった。
妻はコーヒーを持ってきて右斜め前に座った。
いつもならすぐ隣に座るが、俺の表情を見るためか少し距離を置いている。
「あのさ、口座の件なんだけど・・・」
静かに口火を切ると、
口座が減っていること、変な請求書が届いていること、最近のカード利用額が大きいことを指摘された。
怒っているというよりは
呆れた表情だった。
俺は最初、たくさんの言い訳を用意していた。
でも自分が悪いことは明白。全て正直に事情を話すことに。
1〜2時間の話し合いの後、妻が最後に一言。
「あすか(娘)にだけはいつもの優しいパパでいて」
俺はハッとした。
いつも通りにしているつもりだった。
でも、妻がわざわざそれを言うということは
おそらく娘が、最近俺の顔色が悪いことに気づいて聞いてきたのだろう。
恥ずかしい。
妻にも娘にも心配はかけられない。
俺は「いつもの優しいパパ」でいたい。
いたい、じゃない、いよう。
こんな顔色の悪い俺じゃダメだ。
どうすればいい?
やっぱり経済的、精神的に余裕があるパパになるべきだ。
・・・これから娘の将来も考えると経済的な悩みが出て来る。
幼稚園から社会に出るまでの支出、小学校だけで約273万円の支出(公立)、中学校と高校の6年間で約298万円の支出(公立)、合計571万円はかかる。
もし娘が大学に行きたいと言った場合、4年間で更に約243万円の支出(国立)がプラスされる。合計814万円。
これがもし私立だとしたら、、考えるだけで恐ろしい。
まだ小学生。そこまで考えるのはまだ早い。
でもこれから、最低でもこの生活は維持していかなくてはいけない。
出来れば高い収入を狙って行きたい。
そのためには、やはり『何か』をしなくては。
夕暮れ時。
娘が友達の家から帰って来た。
「ただいまー」
「おかえり、手を洗ってうがいをしたら今度はパパと遊ぼう」俺はなるべくいつもの優しいパパを演じた。
さっきまで深刻な話をしていたから、たぶん表情は硬かったと思う。
でも娘はいつもと変わらず、うん!と言って洗面所に向かった。
キッチンからは、トントントンと料理する音が聞こえる。
妻は「いつもの優しいお母さん」のままだ。母は強しと言ったところか。
いつもと変わらない風景、日常。
俺はこれを守り続けなくてはいけない!
男に経済力は不可欠!
綺麗事は無し!
俺は、奮起して、改めてしっかりと着実に稼いでいく方法を探ることにした。
そして『最後の賭け』を行うことにした。
★衝撃のクライマックスへ・・・
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「下克上パパ」スマホ小説
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