転生赤ずきん

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「ごめんお母さん。変なこと言って、どうしても怖くて八つ当たりしちゃった」 「いいのよ。でも、そんなに怖いなら日を改めてもいいのよ。今日はお母さん用事があって行かれないから、明日でも一緒に行く?」 「大丈夫。一人で行く。それが私の運命だから」  転生赤ずきんは決死の覚悟を持って出ていった。もしかしたら死ぬかもしれない。もう二度とお母さんと会えないのかもしれない。そう思うと何度も転生赤ずきんは足を止めて振り返る。手を振って絶対帰ってくるからねって繰り返す。  たかだか30分離れた森の中へ向かうだけ。母との温度差は計り知れない。何度も振り返る転生赤ずきんに対して、母はどうしてあんなに変な子に育ってしまったのだろうとため息をついていた。  村を出て、森を歩く転生赤ずきん。童話では楽しそうにスキップをしているところにオオカミが現れる。だけど、とてもそんな気持ちではなかった。足取りは重くて、小さな小石に何度も蹴躓く。倒れそうになりながらも踏ん張っていたけれど、ケーキを手放してしまった。  箱がひっくり返って地面に落ちた。中身を確認するまでもない。そんな時に現れたのがオオカミだった。  木のように背が高くて、口から飛び出すほどの犬歯と転生赤ずきんの顔よりも大きな手。恐怖のあまり体をぎゅっと固くさせた。 「お嬢さん大丈夫かい? ケガはないかい?」  その風貌とは違い穏やかで包容力のある声だった。 「僕がもう少し早く駆け付けていれば受け止めてあげられたのに、ごめんね」  何も悪くはないオオカミは自分を責めた。見てくれとは大きく異なる一面に驚いた。 「一人なの? これからどこへ?」 「一人です。おばあちゃんの家です。病気なのでお見舞いに行くんです」  オオカミはニヤリと笑った。声を掛けて、返事が返ってきた時点でほぼ成功。この娘は完全に騙すことが出来ると確信していた。その上、おばあちゃんの家へ行くと言う。この娘一人ではお腹は満たされないが、おばあさんがいるなら十分だった。獲物としてはこれ以上ないと喜びが顔に出たのだ。
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