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気になる
いや、気になる。
正直いえばもうちょっと聞きたかった。
見た感じ、いろんなことを話してくれそうだから聞けば話してくれるだろうけど、不審がられそうだから辞めておこう。
…………いや、少し聞いてみよう。
「娘さんは家庭部か何かに入っているんですか?」
「いや、家庭部じゃなくて茶道部よ。毎週金曜日に部活してるみたい。」
「娘さん、どこの市民図書か……「ごめんくださーい。」
「はーい。」
遮られたわ。
俺は諦めてケーキを食べる。
「今日は嫁との結婚記念日なんでアレンジメントしてもらいたいんですけど。あ、予算は5000円です。」
「承知致しました。結婚記念日、おめでとうございます。
ただいま少々込み合っておりまして、申し訳ありませんが、あと15分ほど頂いてもよろしいですか?」
「あぁ、いいですよ。そこで待ってもいいですか?」
「どうぞ。」
そう言って30代くらいの男の人が俺の座っているところと観葉植物で隔てられているいる椅子に座る。
俺以外に客が入ったので、話しかけ続ける訳にも行かない俺はササッと残りのケーキを食べてジュースを飲み終えておばさんを待った。
5分後くらいたったようだった。
「お待たせしました。」
特にすることがなかったのでバックに入っていた本を読んでいると声がかかった。
ぱっと目の前を見ると、なんとも見事にアレンジメント……っていうのをされていて、純粋に綺麗だと思った。
さっきのぐちゃぐちゃにしてしまった花と安全だった花の量が、この花束の量と同じくらいで、その上色味が増えているので、少し余分に花を足してくれたんだろうと思った
「ありがとうございます。お花、付け加えてくださったんですか?」
「……あ、んー、これはお礼よ。
それに、ぐちゃぐちゃになったお花は商品としては出せないから。
家の畑にでも埋めるわ。気にしないで。」
「ありがとうございます、母も喜びます。
また来るので、その時はよろしくお願いします。」
「うん、いつでもいらして。」
「ケーキ、美味しかったです。娘さんにもよろしくお伝えください。
では。」
俺の中では100点満点のお礼とお辞儀をして、踵を返す。
店を出て、この店の看板を見る。
花屋 さき
さきは娘さんの名前だろうか。
気になる。
この花、母さんにあげよう。
そう思いながら帰路についた。
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