小説を深読みしたら嫌われました

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 私はテレビ局の社員だ。記者職を経て、ドラマ製作部門のディレクターの経験を積んだ。  今度の人事異動でドラマ制作部のプロデューサーに昇進した。勤め先のテレビ局で初監督をするのだ。脚本も任された。とても緊張している。  深夜の低予算ドラマ番組だが、多くの素晴らしい小説作品を参考にする。斬新な映像表現技法を取り入れたい。  しかし、自分の職業を小説投稿サイトで伏せた。多く作品の感想欄に、「目に喜びの色が宿るって、具体的に、どのような状態ですか?」などと質問しまくった。  数十人の書き手さんから、茶化し扱いされ、スルーされた。しかも、一部の書き手さんからは、ブラックリストに載せられてしまったようだ。  私への抗議をする、サイト内メールが数十通は来た。 「あなたを嫌いな理由は、小説をからかっている」 「小説の揚げ足を取るような人と関わりません」 「あなたを嫌いな理由は、言わなくても分かっているはずです」  いわゆる荒らしと、誤解されてしまった。謝って説明しようにも、作品の感想欄に書き込めない。また、サイト内メールも受信拒否だ。  書き手さんの多くは、私の真摯に質問に答えてくれた。心から感謝している。  後輩で助監督をする山崎君も、私の話を聞いてまねをしている。  彼は一か月前に、小説投稿サイトの運営さんと局の許可を受けた。  『東西(とうざい)テレビ ドラマ制作部(公式)』で、小説投稿サイトに会員登録したそうだ。一か月でフォロワー数が500を越したそうだ。  私は勤め先の会社名を、ネットで出したくなかっただけだ。(完)
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