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ちょっとした事件
「お母さーん!」
二階から私を呼ぶ声。
忙しいってのに……。
「何ー?」
包丁を置き、階段を上る。
「まあちゃんがー!」
え、真綾の緊急事態?
まさか、怪我とか……!
「真綾……!」
子供部屋の扉を開くと、そこにはしゃがみこんで泣きわめく真綾と、気持ちよく寝ている雅と、真綾の頬を一生懸命擦る暁斗がいた。
「どういう、状況?」
今一番落ち着いていそうな暁斗に問い掛ける。
真綾に目立った怪我はなさそうだし……。
何があった。
「まあちゃんが雅を無理矢理起こそうとして、そしたら雅がまあちゃんの顔を蹴っちゃって……。」
そういうことね。
だから頬を擦ってたのか。
「暁斗、真綾の面倒見てくれてありがと。私が何とかするから、下行ってて。」
まだ学校まで時間あるし、お弁当は後でも大丈夫よね。
この状態の真綾を放っておいたら、部屋がめちゃくちゃになるわ。
「真綾、どこ痛いの?」
「ここぉ……!」
泣きながら右頬を指差した。
確かに、少しだけ赤いかも。
「下行って冷やそうか。おいで。」
床に張り付いて離れない真綾を、何とか抱き上げる。
そして、真綾を蹴った張本人の雅も、左脇に抱えとく。
ソファーに転がしとけば、暁斗がどうにかしてくれるからね。
「うぅ……!」
階段を下っている途中で、突然雅が暴れだした。
ヤバい、気付かれたか。
「いやぁ!」
「雅、ちょっと!」
小学三年生とは思えない暴れぶり。
きっとここで降ろしたら、子供部屋へ逆戻りしてしまうだろう。
だが、リビングまで連れていけば、雅は暁斗が大好きだから、暁斗を見れば目が覚めてしまう。
もう少しの辛抱だ。
「痛い痛いっ!」
雅が私の背中を蹴る。
その衝撃で、真綾はまたもや涙目になっている。
「ああもうっ……。」
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