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末っ子
「真綾、行こうか。」
「あいっ!」
無邪気に笑う真綾を見ると、そんな無力感も消え去るけどね。
「真綾はまだ、私が必要だよね。」
成長していく子供達を見ていると、嬉しいような寂しいような、複雑な気持ちになる。
「……?」
あわよくばずっと私の元に居てくれないか、なんて。
親バカが過ぎるかな。
「ふふ、今日は保育園で何するの?」
車を走らせながら、真綾に聞く。
保育園の話をすると、大抵喜んで話してくれるからだ。
「うーんとね、お絵描きするんだよ。」
あれ、何だか声色が暗い。
「何の、お絵描きするの?」
「お友達……。」
やっぱり、顔は見えないけど、泣きそうな声をしている。
「真綾、どうしたの。お絵描き嫌なの?」
「ううん。」
「そう?」
このとき、もっと深く聞いていれば良かったのかもしれない。
お迎えの時、私は酷く後悔した。
「また後でね。」
「はーい……。」
相変わらず暗い真綾を送り届け、私は仕事へ向かった。
真綾のことが気になって、あまり集中してなかったのか、何度も上司に怒られてしまった。
しかも、残業。
少しだけ、迎えが遅れてしまった。
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