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末っ子④
「駄目だよそんなのっ!」
「えっ?」
突然押し退けられたと思うと、真綾が朱里ちゃんを押し倒す勢いで抱き締めた。
「朱里ちゃんがいないとっ、皆寂しいよっ。まあちゃんと仲良くしてくれなくてもいいから、修行なんてしちゃ駄目!」
その瞬間、朱里ちゃんの目に光が宿ったような気がした。
「真綾ちゃん、知らないのっ……?」
「朱里ちゃん?」
抱き締める真綾を引き剥がすと、大粒の涙を流し始めた。
「私ね、嫌われてるんだよっ……?」
「そ、そんなわけ……。」
真綾をはね除ける為の嘘かと思いきや、朱里ちゃんの頬を流れる涙は、本物のようだった。
台詞を奪われた俳優のように言葉を詰まらせる朱里ちゃんは、どこにでもいる普通の三才児だ。
「お砂場で遊んでる時にね、聞こえたの。「朱里はいつも偉そうでウザい」って。」
「嘘だよ、そんなの。皆、朱里ちゃんといると楽しそうだよ?」
「そんなの、表だけっ。本当は、私のことウザいって思ってるの。」
それで、焦った朱里ちゃんは、いつも一人でいる真綾に目を付けたらしい。
真綾をいじめれば、優位に立てると思ったと。
「だけどね、私を庇う皆を見たら、「こんなの違う」って思った。」
「私は、強くなんかなかった……。だから、精神を鍛える為にって、お爺ちゃんが……!」
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