ながれるおと

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「おーい、秀。俺も入っていいか」 コンコン。 どうやら直人が起きてきたらしい。 項垂れた首をずるっと僅かに風呂の入口に向ける。 粗い硝子から見える直人の輪郭はもう既に肌色だった。 というか、初めから裸だけど。 秀の返事を待っているのか、もう一度コンコンと戸を叩く音がする。 「んー」 きっとあっちには聞こえない。シャワーの音にかき消された声を喉から出す。 あー、もうやだな。なんか、もう。 暖かい温度に包まれているせいか、心がいつもより落ち着いている。なにも感情の起伏がないような、もう良いかな、なんて思えてしまうような、のっぺりとした感覚。 「なぁ、直人ぉ?もうやめよーぜー」 今度は腹から声を出す。 あぁ、体の中が震えてる。声が出ている感じがする。 今なら言える。この温度なら大丈夫な気がする。 「なにが」 直人は律儀に入ってこない。 いつものように、友達と話してるような声がする。
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