第2話「出会い」

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第2話「出会い」

「……ん……っ?」 ここはどこだろう。 一体どの位寝ていたのだろうか。 気がつくと私は森林の中の大きな岩の側で横たわっていた。 小鳥がさえずり、風で木枝が揺れ、心地良い音を立てている。 「よいしょっ」 私は立ち上がり辺りを見渡す。周りには草木しか無いように見えたが、 幸い近くに細い通路がある事に気がついた。私はその通路を手掛かりに歩き出す。 「……」 あの扉に入って青白い光に身体全身が包まれたその時。誰かの声が聞こえた瞬間から記憶が途切れていて、その後何故森林の中で私は横たわっていたのか…… ……… 暫くの間その事について考えながら歩いていたが、特に進展もなく、只々周りに草木しか無い世界を歩いているだけだった。誰一人出会うことも無く、何も分からずに歩き続けている。何処に向かっているのかも分からなかった。 「……!」 私は遠くに開けた空間がある事に気がつく。 何があるのかは分からないが、取り敢えずそこまで行ってみる事にした。 開けた空間に辿り着くと、その空間にあったのは崖とそこから流れ落ちる滝だった。 その近くには巨大な岩があり、一際存在感を放っていた。 しかし、相変わらず誰とも出会わなかった。というか、動物でさえも出会わない。 と、私は気がついた。 『道がここで途切れている』事に。 「……んー……どうしよう」 口から放った言葉通り、どうしたらいいのか分からなかった。 道が途切れ、私は唯一の手掛かりを失ってしまったのか。 一体どうしたらいいのか……解決策を考えようとした、次の瞬間だった。 ゴゴゴゴゴ…… 「……!?」 突然地面が大きく揺れ背後を振り向くと、なんと巨大な岩が動き出し、地面から巨大な石の腕手が現れ地面に手をつき地面に埋まった身体を押し上げるかのように力を入れ、その瞬間ドォォン、と巨大な身体が地面から抜け大ジャンプし、着地した瞬間に地面が大きく揺れた。巨大な人形の岩の魔物を突然目の前にした私は驚愕せざるを得なかった。 『……グオォオォ!!!』 岩の魔物が私を見た瞬間、目と胸部分の巨大な宝石が赤色に光り私に襲いかかってきた。巨大な岩の左手を拳に変え、殴りかかってくる……! 「っ、くっ……!」 私はその拳の射程範囲から滑り出し、間一髪で避ける。 が……その瞬間今度は右手を拳にし殴りかかってきた。 私は直ぐに立ち上がり岩の魔物から逃げ出し射程範囲から逃げ出したものの、 地面を殴った爆風に飛ばされ、少し近くにあった木に身体を直撃してしまう。 「うぐっ……!」 直撃した痛みが身体を襲うが、今はそれどころじゃなかった。 岩の魔物はこちらにゆっくりと近づいて来ていた。 最早、万事休すか……そう思った瞬間だった。 「……っ!」 突然腕輪の宝石が純白色に光り出し、この土壇場に何かを思い出した。 詠唱文か何かだろうか、よく分からないが…… ……今は「それ」に賭けてみるしかなかった。 「……エルピスの光の糸よ、一繋の光へと収束し 敵を撃ち滅す希望の光の束となれ!『エルピシャス・アクティナ』!」 詠唱文を言い切った瞬間、突然目の前に一つと岩の魔物の背後近くに三つ魔方陣が一瞬にして描かれた。そこから発される光の糸が一繋の光へと収束していく。その神秘的な現象に、こんな状況にも関わらず私は見惚れてしまいそうだった。 数秒後、全ての魔方陣から光の束が勢いよく放出された。 『グオオッ!!グ、グォォオォォ……』 岩の魔物は光の束に直撃し巨大な爆発を起こした。 直後、岩の魔物は粉々に粉砕され、大きな岩と宝石の破片が飛び散った。 「……はあっ……あ、危なかった……!」 突如として訪れた危機は去り、その場で足が崩れ落ち今までにない程の安堵の溜息をつく。突然巨大な魔物が現れて襲いかかってくるなんて……あの詠唱文を思い出してなかったら、今頃私は既にあの魔物に殺されていたかもしれない。 暫く私は右腕に嵌めていた僅かに光る腕輪を見つめ続けていた。 その美しさにまた私は見惚れてしまう。だが、最初にこの腕輪を触れた時に起こったあの出来事を思い出してしまい私は顔を顰めた。 「……んー……」 岩の魔物を倒したとはいえ、周囲を見渡しても通って来た道を除いては道一つ無い。その事実については何の根本的解決にもなっていなかった。道を戻ったとしてもただあの大きな岩に戻り着くだけなのは既に分かっている。 「……っ!?」 何か解決策を探してみようかと、その場から立ち上がろうと身体を動かそうとした途端、背中に強い痛みを感じた。先程木に身体を直撃させてしまった所為なのだろうか。かなりダメージが大きく、立ち上がろうとしても立ち上がれない。その場から身動きが取れ無くなってしまった。また万事休すか……流石にこれは私もどうしようもない。 そう思っていた次の瞬間だった。 「……!」 何かバサバサッと空から音が聞こえたような気がして空を見上げると、崖の上に巨大な鳥が着陸しようとしていた。鳥が着地した瞬間、誰かが鳥から降りたのを私は遠目で確認する。誰かは分からないが、大声で助けを求めれば気づいてくれるかもしれない。二度と回ってこないだろうこのチャンスを逃してはならなかった。 「おーい!誰か助けてー!!」 私は出せる限りの声を出して助けを求めた。 これで崖の上まで私の声が届いていなかったら……と不安という感情が私を募らせた。 ……… しかしその不安もただの私の考え過ぎだったようだ。 その人は私に気づいたのか鳥の上に乗り、私の方へと降りてきてくれた。 「君、大丈夫!?」 鳥から降りて慌てて駆け寄ってきてくれたのは、先端部分に翠色の宝玉が嵌め込まれた魔杖と手提げ鞄を持った一人の少年だった。榛摺色のミディアムヘアーに鮮緑色の眼をしていて、温和な雰囲気を醸し出している。 「う、うん……ありがとう、私に気づいてくれて」 よくよく考えたら目覚めてから初めて見る人間だった。 私は少し言葉に詰まりながらも、彼が私に気づいてくれた事に感謝の言葉を言った。 「いや、びっくりしたよ…… 突然遠くから爆発音が聞こえた物だから……って……」 「……?どうかしたの?」 少年は視点を私から外した途端、話し声が途切れ驚愕した表情になった。 少年の視点は大量に飛び散った岩の魔物の残骸に向けられていた。 「えっ……『ジュエリーゴーレム』が粉々に……!?」 「……?『ジュエリーゴーレム』?」 「この森林一帯で一番強い魔物だよ、Aランク魔導士でも3、4人集まって倒せる位の強さなのに……まさか君がやったの?いや、流石にそんなこと」 「うん、まぁ……」 A級団員が何なのかはよくわからないが、兎に角それ位強い魔物を一撃で倒してしまった事だけは分かったので取り敢えず私は岩の魔物に遭遇した所から順に話してみた。 話し終わった後、少年が呟いた。 「成程……夢でも見てるのかな、僕」 「いや、本当だってば……」 殆ど信用してくれなかった。そんなに起こり得ない事なのか…… 「……まぁ、とりあえずルスーに乗って僕の故郷の村に行く? 服もかなり汚れてるように見えるし」 そう言うと少年は鳥に視線を向けた。私もそれに合わせ視線を向ける。 ルスーとは少年が乗っていた鳥の事だろう。 「うん、そうする……っ!?」 「え、どうしたの!?」 「せ、背中が……っ!」 ……忘れていた。 背中にかなりダメージを負っていた事を完全に忘れていた。 私は背中を必死に抑え痛みを抑える。 「背中が痛いの?分かった、ちょっと待って!」 そう言うと少年は魔杖を空に向けた。 「自然の癒力よ、今ここに集い汝を癒したまえ。『ヒーリング』」 詠唱文を言い終わり魔杖を私の方へ向けると、翠色の宝玉が輝き始め緑色のオーラが私を包んだ。身体が癒され背中のダメージが無くなっていく感じがした。 「……!」 「これで多分大丈夫だと思うよ。ほら、行こう」 そう言うと少年はルスーの上に乗り、背後を軽く二回叩いた。 「……うん」 私は立ち上がり、ルスーの上に乗り少年の後ろに座った。 「ルスー、村に戻って。 あ、落ちないようにそこにある命綱ちゃんと持っててね」 ルスーは主人の指示を聞いた瞬間、羽を広げその場から私達を連れて飛び立った。
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