12人が本棚に入れています
本棚に追加
結末
僕は思わず声を上げた。
「あの・・るりちゃん・・?」
宮司さんは深く頷いた。
「武将は説得をしたそうですよ。
このままゆくと自分たちは赤子になってしまうと。
それまでに善行を積まないと、
このまま天にも行けずに
ただ消え去ってしまうかもしれないと。」
僕は小さな虫のようになり、無に帰るさまを想像してぞっとした。
宮司さんもしばらく沈黙して、また静かに話し出した。
「ワシカグチ、という名前で思い出したのです。
鳥の鷲に口と書いてワシカグチ。鷲口のお館様。
それがこの武将の呼び名でした。」
僕は唇を舐めてしめらせた。
「それでは・・助けてくれた青年が・・?」
僕たちは薄暗くなった部屋で、お互いに見つめ合った。
「彼らは・・まだ救われてはいないのですね・・。」
宮司さんは瞬きを数回して、涙を堪えているようだった。
「いや・・長い話をきいてくださりましたな。
どうぞ一夜の夢と、御心にとどめ置きください。
おやすみなさい。ごゆるりと。」
宮司さんはそういうと静かに部屋を辞した。
最初のコメントを投稿しよう!