赤いおじちゃん

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赤いおじちゃん

「ねえ、赤いおじちゃん」 「なんだい、お嬢ちゃん」 夏の公園はジリジリと焼けるように熱い。こうして蝉の鳴き声に耳を傾けながらベンチに座っていると、自分自身の浮世離れした状況を客観視できてしまう。 隣に座る麦わら帽子の幼女は、平然とした表情で俺の顔を見上げてくる。将来が楽しみな美少女だ。俺がそっち系の趣味を持っていたら結構まずい状況だったかもしれない。 「どうして、おじちゃんはそんなに赤いの?」 幼女の言葉に、俺は改めて自分自身の体に目を向ける。下半身から首のあたりまでを真っ赤に染めるコスチューム。せめて頭部にいつものマスクをかぶっていたのならそれなりに見られるものなのかもしれないけど、首から上はその辺にいるおっさんだ。正直言って今、鏡は見たくない。 幼女の問いかけに、俺は特に考えることなく返答する。 「たまたまこの色に縁があったからさ」 「縁って何?」 なかなかに哲学的な問いかけだ。俺は少しだけ無い頭を捻らせる。 「縁ていうのはね。つながりのことだよ。お嬢ちゃんにもお母さんやお父さんがいるだろ?お嬢ちゃんがご両親の子どもであることは、それも縁なんだ。だから縁は大事にしないといけないんだよ」 「おじちゃんは、仕事には縁がないの?」 まさかの辛辣な返しにぐうの音も出なかった。まったく最近の子どもは…。ご両親のお顔を拝見したいものだ。
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