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爆弾少女と正義少年
「やべえっ、遅れるっ」
その少年は走っていた。手にリボンで結んだ箱を持ちながら。ずっと走り続けていた。
「ギリギリで間に合いそうだな」
近くの建物にかかっている時計を見て、そのまま走っていった。
と、そのとき、少年の目に非日常的な光景が映った。
見た感じ、女の子が走ってきた。そしてそのあとを、数人の人達が追いかけてきた。女の子はそのまま走り去っていった。
少年は、女の子が建物の角を右に曲がるのを目撃した。それを追いかける者共も見た。
「助けなきゃ」少年はそうつぶやいて、走り出した。
いく分か走ったところで、少女のところまで追いつき、そのあと追っ手のほうを向いた。
「てめえら、女の子に対して何てことするんだ」少年は叫んだ。
しかし追っ手共は、その声を無視して走り続けた。
「待て、待たんか」少年は、追っ手の1人を捕まえて止めようとした。それでもなお進むのをやめない。少年はいよいよ、その者を蹴飛ばした。そして他の者達に対しても、殴ったり蹴ったりしていった。それから、もう少しで少女に追いつきそうになる者のところにまで走っていき、殴って止めようとした。少年と追っ手達との格闘になった。少年はその者共に次々と攻撃を与えていき倒していった。
そのほとんどがくたばったところで、少年は、立ち止まって様子を見ていた少女のところへ近付いていって、話しかけた。「大丈夫かい」
それに対し、少女は「私に構わないで下さい」と言い、またどこかへ去っていった。
「おい待て、怪我してるんじゃないか」少年は追いかけていった。
そして少女は、空き地にまでやってきて、それからそこに建っている小屋の中に入っていった。
少年もそこに入っていった。そして辺りを見回してみた。しかしどういうわけか少女の姿が見当たらなかった。
そのとき、声がした。男の声のようだ。「君、危ないからここから去りなさい」
それを聞いて、少年は叫んだ。「そうか、てめえが悪の親分だな。どこだ。どこに隠れてる。女の子はどこだ」
「いや待て、勘違いするな」更に声が聞こえ、少年は言い放った。「何だと」
そこへまた何者かが入ってきた。さっきの追っ手達だ。
「おめえら。しかし」少年はその者共を見て、異様な感じがした。みんなヘルメットと全身スーツのようなのを身に着けている。しかしバイクレーサーのそれとはまた違う。何かSF映画にでも出てきそうな姿である。それにさっき見たあの少女も変わっていた。何というか、外出時のお姫様のような、あるいは未来の宇宙飛行士のような、いかにも同人誌即売会から抜け出してきたコスプレイヤーのような姿であった。こいつら何者なのだろうか。
いずれにせよ、こやつらとまた格闘になると判断して、少年は身構えた。
と、そのとき、またどこからか声がした。「あれはもうここにはいない。撤退せよ」さっきのとは別の低い男の声でそう言ってるように聞こえた。
そのあと、また異様な光景を目にした。追っ手達の頭上に、何か黒く平べったいものが出現した。それから、その者共の体が浮き上がり、その物体に頭をぶつけた。いや違う。それは物体というより上下逆さまになった穴みたいなもので、その中にこいつらが吸い込まれていってるようであった。
「逃がすか」少年はその1人の体にしがみ付いた。そして自分もその穴の中に入っていった。
そこは真っ暗な無重力空間のようであった。慣れない感覚のため、少年は相手の体から手を離した。そしてどこかへ移動させられていくのを感じた。
「うわああああああ」
「何ということだ、第三者を巻き込んでしまうとは」
「仕方がありません。とりあえず、その者を追跡していきます」
「頼んだぞ」
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