第1章「個性のLiberte」

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月子のその言葉に、蒼紫は「ハア?」と呆れたように首を傾げた。 「ちょっと。それはまだ気が早いんじゃないの? オレ達まだオリジナルの曲さえないでしょ?」 「そ、そうですよね……」 蒼紫のその言葉に月子が少ししょんぼりした表情でそう返すと、今度は陽輝が「まあいいじゃん!」と明るい笑顔で口を開いた。 「今はまだ無理でも、もし今後オリジナルの曲ができてMVを自分達で撮るってなった時に、俺が知り合いからまた借りればいいし! まずは自己紹介動画! ほらほら、早く撮ろ!」 陽輝がそう言うと、蒼紫は一つ溜息を吐いてから「能天気なヤツ……」と呟いた。 「それじゃあ、まずは幹大から撮ろうか」 カメラの最終的な位置を調整した後私がそう言うと、幹大が「分かった」と返事をし、カメラの前に立った。撮影係は陽輝。事前に蒼紫から「壊さないでよ?」とくぎをさされていた。……さされてはいた、のだが。 「……ちょっと、陽輝?」 蒼紫が口を開いた。陽輝は「ん?」と蒼紫の方を振り向いた。 「何だよー、壊してないぞ俺ー?」 陽輝がそう言うと、蒼紫は「そうじゃなくて」と再び口を開いた。 「そうじゃなくてさ……なんか、あんた、やけに手慣れてない?」 蒼紫は戸惑うようにそう言った。その疑問は、丁度私も思っていたものだった。 ―そう。やけにカメラの扱い方が慣れているのだ。 今度は幹大が口を開いた。 「陽輝、どこかでカメラの扱いに関して習った事があるのか?」 幹大の言葉に、陽輝は「それもあるんだけど」と返した。 「俺、元々写真とか動画を撮るのが好きでさ。ここにも『写真部』ってのがあったからそこに入部するつもり!」 「ということは、普段から写真や動画をよく撮る方なのか?」 「めっちゃ撮るよ! 撮るし撮った写真や動画はパソコンにうつして保存してる! だから自己紹介動画も任せて!」 陽輝はそう言って右手の親指を立てた。グッドサイン、だろう。 その後、陽輝は幹大に立ち位置を指示し始めた。幹大もそれに合わせて動いている。 「この位置で大丈夫か?」 ある程度位置を調整したところで幹大がそう聞くと、陽輝は「バッチリ!」とOKサインを出した。 「それじゃ撮るよー! あっ、普通に自己紹介してくれれば大丈夫だから! 面白い事とか言わなくて大丈夫だよ!」 陽輝がそう言うと、幹大は一つ溜息を吐き「お前じゃないんだから」と返した。
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