第1章「個性のLiberte」

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「それじゃあ撮るよー! 3、2、1!」 陽輝がそう言った後GOのサインを出すと、幹大は一つ咳払いをしてから再び口を開いた。 「初めまして。星架芸能専門学校アイドル科1年、喜友名幹大です。この度、同級生の2名とともにアイドルユニット『Liberte』を結成する事になりました。色々不慣れな所もあるかと思いますが、これから応援してくださると……」 と、幹大がそこまで言った所で陽輝が「ちょっとちょっとー!」と口を開いた。 「幹大君表情かたいぞー! もっと笑って笑って! 内容も堅苦しいし!」 「ああ、すまな……って陽輝! まだ撮ってる途中だろう!」 陽輝の言葉に幹大がそうツッコむと、陽輝が「あっまだ録画中だ!」と驚いたように再び口を開いた。だがその後いつもの笑顔に戻って「まあいいじゃん!」と続けた。 「こっちの方がウケがいいかもしれないし、俺達らしいっちゃらしいだろ?」 「『俺達らしい』って……まだ結成したばかりだろう」 陽輝の言葉に幹大が少し呆れ気味にそう返すと、陽輝は「細かい事は気にしない!」と笑顔で返した。そのようすに幹大は呆れたように溜息を吐き、再び口を開いた。 「……すみません。邪魔が入りました。……改めて、まだまだ未熟な俺達ですが、これから応援してくださると嬉しいです。どうぞよろしくお願いします」 幹大がそう言って頭をさげると、今度は蒼紫が「うーん」と首を傾げながら言った。 「……何か言いたそうだな、蒼紫」 蒼紫の様子に幹大がそう言うと、蒼紫は「いやさあ」と口を開いた。 「悪くはないとは思うんだけど、なーんか『自己紹介』ではない気がするんだよねえ。そう言うのって、自分の好きなものとか趣味とかそういうのを言うんじゃないの?」 蒼紫のその言葉に、陽輝が「確かに!」とハッとしたように言った。 その後、幹大は少し考えたように「趣味か……」と呟き、その後「ああ」と思い出したように再び口を開いた。 「えっと、趣味は読書です。最近は歴史小説をよく読みます。好きなものは……ああ、帽子とかも好きで集めています。あとは……あっ、『スカッシュ』も好きだし得意です」 幹大がそこまで話したところで、今度は陽輝が「はーい!」と口を開いた。 「幹大せんせーい、質問でーす!」 「どんなノリなんだそれは……。……で、なんだ?」 「その『スカッシュ』って……何? スポーツかなんか?」 幹大の言葉に陽輝がそう返すと、幹大は「ああ」と返した。 「『スカッシュ』というのは、4面を壁で囲まれたコートの中で、2人でラケットを使ってボールを交互に打ち合うスポーツです。ボールはゴム製で中は空洞、小さいボールです。これを目の前の壁にノーバウンドもしくはワンバウンドで打ち返す。……単純にいえばそういうスポーツです」 幹大がそう説明すると、蒼紫が「へえー」と口を開いた。 「『壁打ち』みたいなもん?」 「簡単に言えばそうですね。それの相手がいる版、みたいなものです」 蒼紫の言葉に幹大がそう返すと、蒼紫は「なるほどね」と少し感心したように言った。 「……さて、そろそろ俺の自己紹介はこのあたりで締めさせて頂きます。まだまだ未熟者ですが、これからよろしくお願いします。『Liberte』のリーダー、喜友名幹大でした。ご視聴ありがとうございました」 そう言って幹大が一礼したところで、録画が終了した。 録画終了後、陽輝が再び口を開いた。 「カーット! ……うん、なかなか良い感じだったんじゃない?」 陽輝の言葉に、幹大は「そうか?」と首を傾げた。 「少し緊張してしまって、上手く自分自身の事を伝えられたか不安なんだが……」 「最初は誰だってそんなもんだって。それであそこまで話せたなら充分でしょ」 幹大の言葉に蒼紫がそう返すと、幹大は「そんなものなのか」と少し安堵したように言った。
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