第1章「個性のLiberte」

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「はいはい! 次俺! 俺だから蒼紫君録画よろしく!」 陽輝がそう言いながら蒼紫の方に近づくと「はいはい」とその場を離れ、カメラの方に近づいた。 陽輝の方は先程まで蒼紫が立っていた場所に立つ。 蒼紫はカメラの調整と確認を終えると再び陽輝の方をみて口を開いた。 「はーい、じゃあ撮るよー」 蒼紫の言葉に陽輝が「いつでもオッケー!」と返事をした。蒼紫はその返事を確認すると、再び口を開いた。 「はいはい、撮るよー。 3、2、1」 蒼紫はそう言った後、先程の陽輝と同様GOサインを出すと、陽輝はそれを確認した後いつもの表情で自己紹介を始めた。 「皆さん初めまして! 星架芸能専門学校アイドル科1年、『Liberte』の三星陽輝です! 趣味は写真を撮る事! 俺は元々アイドルが好きで、よくテレビでみるような、ステージの上で目一杯輝けるアイドルになりたくて今の学校に入学しました! これからたっくさんの人に見てもらえるように、幹大君や蒼紫君と一緒に頑張りたいと思いますので、応援よろしくお願いしまーす!」 そこまで話して陽輝が一礼すると、蒼紫が「うっわ……」と口を開いた。 「何あんた……すでに『アイドル』感ありすぎるんだけど……」 蒼紫がそういうと、陽輝は「当たり前だろー?」と返した。 「まだ学生とはいえ、俺達はもう『アイドル』なんだからな! それにこの自己紹介動画の為に色んな『アイドル』達の自己紹介動画を見ながら勉強してきた!」 「成程……。『努力』したんだな。偉いぞ陽輝」 陽輝の言葉に幹大がそう返すと、陽輝は「ちょっと子ども扱いしてない?」と少し不満げな表情で返したが、すぐにいつもの明るい表情に戻った。 「……ま、いっか! とにかく、まだまだ未熟ではありますが、精一杯頑張ります! よろしくお願いします!」 そう言って陽輝が一礼したところで、録画が終了した。 「カット。……正直眩しすぎるわ、オレには」 録画ボタンを止めた蒼紫がそう呟くと、陽輝は「そうかー?」と返した。 「というか、俺だけじゃなくて幹大君や蒼紫君も輝かなきゃいけないんだぞ? 『アイドル』なんだからな!」 陽輝がそういうと、蒼紫は「わかってるけどさあ」と少し呆れた様子で返した。 その後、今度は幹大が「さて」と口を開いた。 「あとはこの自己紹介動画を編集して投稿するだけだな」 幹大のその言葉に、月子が「はい!」と返事をした。 「実は先ほど『Liberte』の公式アカウントを作成しました! なので動画はそちらに投稿しましょう!」 「ああ、もしかしてさっきからパソコンで何かしてたのってそれやってたの?」 月子の言葉に蒼紫がそう返すと、月子は「はい!」と返した。 その言葉に、今度は陽輝が「へえー!」と返した。 「月子ちゃんってそういうの得意なのか?」 「はい! ……っていっても、あんまり専門的な事は分からないんですが……。けど、SNSにアカウントを作るとかそういうことなら多少は出来ます!」 「そうなのか。俺はそういった事は全く分からないからな。……できれば今度、俺にも教えてもらえないだろうか?」 月子の言葉に幹大がそう返すと、月子は「私でよければ!」と返した。 「……これでよし、と」 全ての自己紹介動画を撮り終え、動画の編集は私が担当することになった後、ひとまずその場は解散ということになった。 その後私は職員室に戻り、3人分の自己紹介動画の編集を終えた後、その動画をSNS投稿担当の月子にメールで送った。 (……しかし) 動画編集をしていて、改めて感じた。この『Liberte』というユニットはそれぞれの個性が強すぎる。 あの蒼紫でさえ『眩しすぎる』と表現した陽輝の『アイドル』としての輝き。 完璧だが時折『アイドル』ではなく『タレント』っぽくなってしまうようなテンションの蒼紫。 ……鍵となるのは、その2人をリーダーの幹大がどううまくまとめるか、だろう。 (……まあ、幹大なら大丈夫だと思うけど) そう思いながら、私はひとまずデスクを片付け、帰宅の準備をした。
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