第1章「個性のLiberte」

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翌日の昼休み。私は1年A組の教室で、陽輝・幹大・月子とともにお弁当を食べながら、先日投稿した『Liberte』の自己紹介動画について話していた。 やはりそれなりの反響はあったらしく、2人とも校内の一部生徒に声をかけられたという。 「いやー、すげえよなSNSって! まさかあんなに声をかけられるとは思わなかった!」 「俺もだ。あの動画がきっかけで『スカッシュ部』に勧誘されたしな」 「そうなんですか!? それで、喜友名君は入部するんですか?」 「そのつもりだ。今日の放課後に早速見学させてもらう予定になっている」 月子の言葉に幹大がそう返すと、陽輝は「すっげー!」と目を輝かせていた。 そうか。そういえばこの学校には『スカッシュ部』というものが存在していたんだっけか。あまり目立った活動をしていない様子だったから忘れていたのだが。 そんな事を考えながら、3人の会話を微笑ましく思いながらお弁当を食べていると。 「イデアも見ました」 「うわっ!?」 突然聞こえてきた言葉に、私含めて4人ともビックリした。 声がした方を向くと、同じクラスの『細久保(ほそくぼ)イデア』がそこにいた。 「な、なんだよー! いきなり出てくるなよー! ビックリするだろー?」 陽輝がそう言うと、イデアは「ハルキが気づかなかっただけなのです」とそっけない顔で返した。 続けて口を開いたのは幹大だった。 「……俺達の自己紹介動画を見たと言ったな。見てくれてありがとう」 「礼を言われるほどではないのです。イデアは、ちょっと興味を持ったから見ただけなのです。それだけです」 「そうか。……それでも、興味を持ってくれただけで嬉しい」 イデアの言葉に幹大がそう返すと、イデアは「そうなのですか」と返した。 「では、そのついでにイデアが思った『第一印象』を述べてもいいですか?」 「それはむしろありがたいです! 是非意見をお聞かせください!」 イデアの言葉に月子がそう返すと、イデアは「では」と一呼吸置いて、続けて言った。 「……3人とも、『個性』が『バラバラ』です」 「……えっ?」 イデアの言葉に、私を除く3人がきょとんとした顔でそう返した。 少しの沈黙のあと、陽輝が「えっ、と」と口を開いた。 「あの、イデアちゃん? それってつまり……どゆこと?」 陽輝の質問に、イデアが「すみません」と一言謝り、続けて言った。 「少し言葉がわかりにくかったですね。イデアが思ったのは、良く言えば『個性豊かで楽しそうなユニット』。……悪く言えば、『協調性がまったく感じられない不安定なユニット』という事なのです」 「『協調性が感じられない』……?」 イデアの言葉に月子がそう返すと、イデアは「はい」と頷いた。 ……正直、薄々勘付いてはいた。いつかそう言われるのではないかと。それが陽輝や幹大と同じ『アイドル科』の生徒なら尚更気づくだろう。 だが、まさかイデアに言われるとは。
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