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「『閉校』!?」
私が事情を説明すると、陽輝がそう驚いたような表情を見せた。他の2人もかなり驚いている様子だ。無理もない。入学したばかりの学校がいきなり『閉校』の危機を迎えているなど、普通なら考えもしない事態だろう。
3人の中で一番驚いていたのは陽輝らしく、わかりやすく動揺していた。
「え、『閉校』って、ほんとに!? 嘘じゃなくて……!?」
「残念ながら本当だよ。ここ数年間で新入生が減りすぎてね、上から言われたらしい」
陽輝の言葉に私がそう返すと、陽輝はさらに「ええっ!?」と驚いた。
「マジか! けど危機って事は免れる事も出来るって事だよな!? 俺に出来る事ある!? 何でもやるよ!? 何なら身体売る!?」
陽輝の動揺っぷりに、褐色の男子生徒が「落ち着け」となだめた。
「すぐ身体を売ろうとするな。……だが、そうだな。何か解決策があるなら、俺も協力したい。……それに、先生もそのつもりで呼び出したんですよね?」
男子生徒の問いかけに私は「その通り」と返事をした。
「『三星陽輝』、『喜友名幹大(きゅうなみきひろ)』、『牧野蒼紫(まきのあおし)』。これから、君達には『Liberte(リベルテ)』というアイドルユニットとして活動してほしいんだ」
「ユニット……?」
私の言葉に、蒼紫がそう聞き返した。
「そう。君達『Liberte』を含む10のアイドルユニット。その全てが有名になる事。それがこの学校が『閉校』を免れる唯一の方法なんだ」
私のその言葉に、幹大が「成程」と返した。
「という事は、月子は俺達『Liberte』を担当するプロデューサー、という事ですか?」
「そうだよ。私も出来る限りサポートはさせてもらう。何かあったらいつでも言って」
幹大の言葉に私がそう返すと、幹大は「分かりました」と返事をした。
「……なら、まずは自己紹介だな。陽輝はさっきしたから別に良いだろう。俺は『喜友名幹大』。アイドル科の1年だ。A組だから、月子とは同じクラスだな。よろしく頼む」
幹大はそう自己紹介した後、月子に手を伸ばした。月子は「よろしくお願いします!」とその手を握り、握手をした。
その後自己紹介したのは、蒼紫だった。
「オレは『牧野蒼紫』。2人と同じアイドル科の1年。まあオレはB組だから隣のクラスになるけど。……ああ、それと」
自己紹介した後、蒼紫は月子に近づいた。月子は「なんでしょう?」と首を傾げる。
蒼紫は月子の顔をじっと見つめた後、続けてこう言った。
「……言っとくけど、もし中途半端なプロデュースの仕方したら、オレはあんたを『無能』をみなすから。そのつもりで、よろしく」
蒼紫の言葉に、月子は「えっ」と少しこわばった表情を見せた。だがその後すかさず幹大がフォローをした。
「おい蒼紫、月子を怖がらせてどうする」
「だってオレ達が『有名』になる事が条件なんでしょ? 中途半端なプロデュースの仕方されて、『有名』になれなかったらどうすんの?」
「だとしても、あまり月子にプレッシャーをかけるな」
幹大の言葉に、蒼紫は「はいはい、分かったよ」と返した。
―これまでの流れで、大体3人の性格が分かってきた。
まず陽輝。彼はとても明るく元気な性格だ。だが『閉校』の危機を免れるためにすぐ身体を売ろうとするなど、ちょっとダークな一面もありそうな気がする。……まあ、本人は冗談のつもりなんだろうが。
続いて蒼紫。彼はすぐ毒を吐くタイプの人間だ。今後、『Liberte』のメンバーや月子と仲良くしていけるのだろうか? そこが少し心配な所だが、理事長が選んだメンバーなのだから、おそらく大丈夫だろう。
最後に幹大。彼は、言うなれば『冷静なツッコミ担当』と言ったところだろうか。すぐ動き回る陽輝の事も、すぐ毒を吐く蒼紫の事も。2人のストッパーを担当するなら彼しかいないかもしれない。
「あ、あの!」
ふと、月子が口を開いた。
「どうした月子? 何か問題でもあった?」
月子の言葉に私がそう聞くと、月子は「問題ではないのですが」と返した。
「あの、私『Liberte』のユニットリーダー、喜友名君が良いと思うんです!」
「……俺が?」
月子の言葉に幹大がそう返すと、月子は「はい!」と返事をした。
その後、蒼紫が「ふーん」と再び口を開いた。
「まあ、妥当な判断だろうね。オレはリーダーっていうタイプじゃないし、むしろリーダーとか面倒臭いと思うタイプだし。……陽輝なんて論外だし」
「ちょ、論外ってなんだよー! まあけど、俺も幹大がリーダーっていうのは賛成! 幹大が一番リーダーっぽいしな!」
陽輝のその言葉に、幹大が「リーダーっぽいってなんだ」と冷静に返した。
「だが、そうか。月子達がそう言うなら、分かった。ユニットリーダーとして、しっかり勤めを果たさせてもらう」
幹大がそう言うと、月子は「はい、よろしくお願いします!」とお辞儀をした。
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