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意外な提案に父は唖然とした。
「なぜだ?るうら。」
「...私としても、兄を死に陥らせた人物を許すことはできません。
兵士達の証言から、兄を殺したのはシークの連中だと知りました。」
「だが、しかし...」
「仇をとるのです。父上。
スパイとしてNに潜入し、Nの中心人物を殺害します。
それが...兄が私に与えた使命なのです。」
父の言葉を遮って思っていることを伝えた。
父の瞳を見つめる。
るうらの感情を全て読み取られているようで全身に悪寒を感じさせる。
「いいだろう。」
威圧的な声に不快感をもったが内容を早く聞きたかった。
「本当ですか!?」
「ただし」
コツコツ、と革靴が床を叩く音。
その音が自分を異常に緊張させる。
ごくり、と生唾を飲み込んだとき、
「お前が潜入するのは、白岡高等学園だ。
ナイトとシークの間にある
あの学園は、なんとしてもこちらが手に入れたい。
白岡高等学園にはシークのスパイもいることだろう。そのスパイに密着し、シークの弱みを握るのだ。」
平然と任務を告げる父は、少し若返ったように生き生きとしていた。
「受けるか?この任務。」
口端を吊り上げ、不敵に微笑む。
父の笑顔を見たのは初めてだった。
「はい。やります。」
「お前は拓也以上に優秀かもしれないな。
るうら。
初任務、しっかりこなせ。」
初めて受けた賛辞の言葉を聞いて、胸の奥がじぃんと暖まっていく。
「はい。任せてください!」
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