01 五秒の思考で魅力に気付いて

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「ねぇよっくん? 時間を停められることができたら何をしたいっすか?」  産まれた時からすでに隣にいた幼馴染であり、この科学部の部長でもある槞彩江(まどさいえ)は、不意に俺に向かって聞いてきた。唐突かつ荒唐無稽な質問ではあるが、文庫本を片手に考えてみる。  時間を停めることができたらやりたいことなど、ぱっと思いつくのは一つしかなかった。  この学校の女子更衣室へと侵入して、あんなことやこんなこと、道徳的に禁止されている全てを暴発させる。思春期の高校生男子の溢れるパッションを曝け出すこと以外、思い浮かばなかった。  無論そんなことを口にすれば、いくら恥ずかしいことの全てを把握しあっている幼馴染と言えどドン引きは免れなく、縁さえ切られる可能性がある。なので、丁寧に選び抜いた回答を口にした。 「電車に乗り遅れそうな時とか、テストの時とかに使いたいな」 「はい、不正解」  どうやら、口にするまでもなく本心はバレているようだった。なら、なぜ訊いてきたのだ。 「実は、時間を停めることのできるコンタクトレンズを発明したっす」 「うぇ、おい、とうとうやり遂げたのか? 全国の男性が歓喜するぞ。お前は新たな神にでもなるつもりなのか?」 「五秒だけ」 「更衣室にも侵入できないじゃねえかよ……っ!」
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