side E あの子は特別、主人公

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side E あの子は特別、主人公

すっかり季節が変わりブラウスの上からセーターを着るようになったある日、放課後新聞部の部室に行くと中から良基と凪沙ちゃんの声がした。 「俺、的野のこと結構前から知ってたんよ。引退試合で怪我してても頑張ってたやろ。もう今さら遅いけど、俺は的野のことを好きになってた。木下なんかと縒り戻してほしくない」 私が昨日良基に話したことだ。この間、凪沙ちゃんは昔付き合っていた他校の木下くんという人に告白されたらしい。 県内ではサッカーの強豪校として有名な私立に入学して、1年生なのにレギュラーらしい。 絵に描いたようなモテ男だ。 どうしてそんな女の子なら誰でも憧れるような人に告白された凪沙ちゃんの好きになった人が良基なんかなんだろう。 凪沙ちゃんはもっと色んな人を選べるんだよ。 私の大切な人をとらないで。なんて。 「ほんと今さら… しかも木下なんかってあの人はお前より出来た人だよ」 私はどうするのがいいんだろう。きっと聞かない方がいいのだろう。 「勘違いしないで。私はお前の泣き虫なところも私と絵琉ちゃんがどっちも大事でどうすればいいか分からなくなってる不器用なところも含めて惚れさせてやるって思ったんだから。私があんたにそうなってほしいと思った通りになってくれないのは仕方ない。私は共依存の関係を理解できないからあんまり口出しはできないけど、絵琉ちゃんみたいに全部あんたに合わせてはあげられないし、しない。私の気に入らないことをしたら仕返しはするし、たぶんあんたほど誰かに執着できない。だからどうしたいのか絵琉ちゃんと話してきて」 私は足早にその場を離れた。 ついにこの日が来てしまった。 良基が私の元からいなくなってしまう日が。 私の大切な人をとらないで。 私の大切な人を連れて行かないで。 私の大切な人を、くだらない共依存の関係から解放してあげて。助けてあげて。守ってあげて。
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