幻魔が町にやってくる

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「歴史が元に戻ったなら、俺たちを超人化した幻魔の魔法、解けてもいいんじゃないか。マンガや特撮では、たいてい、そんな落チじゃないか」ケイコからの電話を受けた後のウルトラ世界最強なぞの覆面プロレスラーアトラスXとして有名な鏡明が言った。 ”それは、多分、その超能力というかは、あなたたちの体の中に秘められていた潜在能力を開花したからなのでしょうね。そして、あなたたちの身の振り方も、もう、わかっているのでしょ”  そういったのは、ヨコジュンマンガのファンクラブ、ヨコタジュンヤ研究会、通称ジュンケンの井沢郁枝女史のことを意識してのことなのは、鏡にはすぐにわかった。  なんだか、今はその流れを使って、いつの間にかタシロの会社の経営を肩代わりするようになっていた、彼女たちなのだ。 「開いた扉、閉じなければ、そのままってことなんだね」 ”そういうことね。そして、あの人たちが、あなたたちの力を必要としているわけで” 「トランシルバニアの?」 ”そうよ”  あの井沢女史、こういってはなんだが、”敗戦処理の名人”のような気がする。  気がつけば、いつのまにかタシロの会社や鏡たちを、あのトランシルバニアのルーナ女王につなげていたのである。それも、この半年ほどのわずかな間に、だ。  当初は誰もがタシロやマチャーキが逮捕されたことで、大会社だが、その牽引車を失った以上、誰もが整理して小さくたたんで事なきを得るしかないだろうと考えたのだが、製品開発の主任である綿引”殿下”が健在なのを思い出し、事業を残すだけでなく、さらに、それをルーナ女王たちの平和活動につなげたのである。  ルーナ女王は、なんと日本人の超常現象研究家東丈をその伴侶に迎えたほどの大の親日家なのだった。ルーナ女王は若いときから世界有数の超能力者として高名な彼女は、取材にはるばる日本からやってきた東丈と伝説的な恋物語の末に結婚したのである。  その一方でもともと、優秀な外交官の父を持つ井沢女史は、若いころから彼の赴任先に同行し、その国、あるいは周辺国のセレブとの人脈は太かった。その人脈の中に若き日のルーナ女王もいたというわけで。  まったく、どこで人間、関係があるものかどうかわからないものである。さらに、紀伊半島の桜で有名な大台ヶ原で修行した大角という修験者、国際名・・もちろん自称・・”チェリー”も、いつの間にやらここに加わっている。  一世を風靡した、ルーナ王女と東丈を主人公に扱った人気漫画”魔法大戦”では、少年漫画誌掲載であったこともあり、なんと中学生という設定にして、登場人物も同じ学校に通う友達ということにしているが、実際の歴史にあっては、”ハナのタシロ”検挙事件の後に彼らは合流するのだった。だから林石隆たちは本当はルーナ女王とジョウ大公の間にできたベアトリス王女に年齢的には違いのだが、そこらはマンガということですべてすっ飛ばしているのである。
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